機体は、B−ドライで安定稼動の目処の立ったM2機関を4基搭載した超大出力メガ粒子砲を搭載するだけでなく、改造装備された脚部に6連装バズーカ4基を備えるバケモノとして設計された。
作戦計画では月面上空を通過しながら、脚部バズーカで拠点爆撃を行い、着陸点を確保。月面移動を4脚で行い、超大出力メガ粒子砲でグラナダ基地の地下深くの施設を撃破するという荒唐無稽なモノであった。
この野心的な機体は幸いにもロールアウトを待たずに停戦を迎えることとなった。
B−ツバイ
B−ドライ
[新資料で発見された ボールバリエーション]
連邦軍のボールシリーズといえば、ジオン公国軍のMSに対し急拠開発され、支援用MSとして大量産が計られた戦闘ポッドとして有名である。民生用の宇宙作業ポッドを原型としたため本来のモビルスーツには程遠く、装甲、火力ともに支援砲台の域を出ず、単体での格闘戦などはもとより不可能というなんとも心もとないシロモノだった。
しかしその一方で熱核反応炉を搭載していないため、MS冷却施設の装備が遅れていた連邦軍艦艇にとっては運用が容易であり、兵士にとっても操作性の高さから人気を呼んだシリーズではあった。
安価かつ大量装備を前提とした本シリーズは、物量でジオンを圧倒するという当時の連邦の兵器思想の一つの流れであったのだ。
この安価かつ大量生産可能という点に着目した汎用兵器廠の技術将校リュウキ・タカノはボールの船体殻そのものをモジュールとして利用するアイデアを提唱し、戦時の混乱に乗じて試作機予算まで獲得してしまったのであった。
そのアイデアとは多種の機能を備えたモジュールとしてボールを利用し、それを組合わせることにより本機をジオンMSに単機で対抗しうるモビルスーツとして運用しようというまことに酔狂な構想である。構想には2機、3機を組み合わせるという比較的まともなもの(?)から16機を最密充填格子にしたモビルアーマー、20機を人型に組み上げた巨大MS、 7機を直列に配列する龍神形態(コードネーム:ドラゴンボール)、GMを中心に60機のボールを球形に組み合わせる対要塞戦モジュールなどという常軌を逸したものにまで及んでいたという。
試作予算を獲得したリュウ・タカノは二機のボールを組み合わせ、一方を完全なプロペラントモジュールとして利用する一見穏健な機体B−ツバイを作成した。ところがその見かけに反して、この試作機で性能証明を果たそうと欲張ったのか、追加されたモジュールはジオンから流出したというマイクロミノフスキー機関(M2機関)が搭載され、大出力ビームキャノンの運用すら可能という化け物じみた機体となっていたのであった。
予想通りといおうか、ボールにそんなモノを持ち込んだおかげでオーバースペックな火力と推進力が機体バランスを崩し、熟練パイロットですら操縦に困難を来たすという事態を招いてしまった。これに対処するためのアビオニクスの改修や、M2機関を安定動作させるいろんな改装がまたアチコチで矛盾を露呈し、その改修にまた高価な補機を積むという駄作機の黄金のパターンを踏み、「安価」というボールの最大のメリットも霧散してしまう始末。
試作機のロールアウトこそ計画発動からわずかに2ヶ月というスピードであったが、こうしたコマゴマした調整に手を取られているうちにソロモン戦が始まってしまう。たった二機を組み合わせるだけでもこれだけ難航しているようではこの構想が採用されなかったのもあたりまえの判断であろう。
調整を繰り返しながらも2機の試験機はア・バオア・クー戦に参戦、生き延びた後はビーム兵器のテストベンチとしてのみ利用されたという。
なお 後にGP−03デンドロビウム計画を知ったリュウキ・タカノは「私の対要塞戦モジュールならあれの1/20の値段で同じ能力が持てるのに」とくやしがったという。
人が経験から学ぶのはこれほどに難しいようだ。
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これまでの資料ではこのようにB-ツバイのみが実際に製作され、実戦投入されたと見られていたが、先ごろ情報公開された戦時資料ではボール3機を組み合わせたB−ドライ、5機を組み合わせたB−ヒュンフの存在が明らかとなった。
B−ドライはM2機関の安定動作に成功し、大出力メガ粒子砲を運用可能となったが、その価格はGM3機に相当したという。
実戦記録については詳細は不明であるが、ア・バオア・クー攻略に参加し、被弾し空間機動が不能となった後は、陥落後のア・バオア・クーの砲台として残されているのが発見されている。
B−ヒュンフはロールアウトを待たずに、グラナダ攻略戦が行われないまま停戦となり、機体が完成した記録はあるものの、その後の行方はようとして知れない。